刀刃の上を湯玉になって転がる温度が何度かどうかというのが分かる測定報告というのはないそうです。とはいえ200℃〜400℃では焼戻し脆性が生じてしまうということで、200℃以下の低温焼戻し処理でなければならないということになるかと思います。現代の鉄鋼材料学というものがなかった千年も昔から、刀匠は流派の掟や経験と勘で、これらの焼入れや焼戻しをしていたということになるようです。伝統的作刀技術というのは、現代科学からみても驚嘆に値するといえるようです。り込みと焼入れによって、折れにくく、切れ味の鋭い日本刀が作られていくそうです。焼入れによって反りが生じるそうです。

刃の部分は急冷されることによって体積膨張の大きいマルテンサイト組織に変態するそうです。棟側の方は刃の部分に比べて体積膨張が小さいパーライトという組織になるそうです。その結果、刀身の長さ方向への刃部の伸びは、棟側の伸びに比べて大きくなるということで、湾曲変形することによって力学的バランスが保たれるということになるそうです。すなわち、日本刀の反りというのは、力学的バランスによって生まれた造形ということになると言えるようです。焼入れによって、刀側と棟側の体積の膨張差によって曲げ変形が生じるということだそうです。棟側のパーライトというのは体積膨張が少ないので引張応力が、刃側のマルテンサイトは体積膨張が大ということで圧縮応力が生じるということだそうです。もし火事などで焼けて高い温度に曝されて、刃部のマルテンサイト組織がパーライトなどの組織に変態した場合は焼入れ前の火造された状態の反りの無い直刀に戻るということになるそうです。坂本龍馬の愛刀陸奥守吉行というのが、火災のために直刀に戻ったそうです。