焼入れ温度としては、炭素量が0.6〜0.7%と比較的高い玉鋼を用いる備前伝では780℃程度に加熱するのだそうです。炭素量が比較的低い玉鋼を用いる相州伝では800℃程度に加熱するそうです。焼入れ温度が比較的高いときは、沸が主調となる沸出来、低いときは匂が主調となる匂出来になるそうです。これは含有炭素量によって変わってくる場合もあるそうです。

玉鋼は、冷却する速度によって異なる鋼組織になるそうです。焼刃土が薄く塗られた刃先の部分は急冷されることになるかと思います。オーステナイトがマルテンサイトという鋼組織に変態するそうです。マルテンサイトというのは、非常に硬く、物を斬るのに適した鋼組織だそうです。刃先から内部に行くに従って、ツルースタイト、ソルバイトという組織も生じるそうです。一方、焼刃土が厚く塗られた棟側は徐々に温度が下がっていくということで、オーステナイトがパーライトとフェライトの組織に変態するそうです。また、造り込みの内部の心鉄は、炭素量が0.3%〜0.4%ほどで、フェライトとパーライトの組織になるそうです。パーライト+フェライトというのは、延性や靭性が大きい集合組織だそうです。この場合、刃の部分は硬くてよく切れるそうです。一方で、刀身全体としては柔軟性があり、折れにくい強靭な日本刀をつくることができるそうです。焼入れで生じたマルテンサイトというのは不安定だそうです。非常に硬く脆いということもあるそうです。そのため、再加熱して粘さを回復させる熱処理が一般的に行われるそうです。これを焼戻しというそうです。作刀においても、合い取りといわれる、水を落とすと湯玉になって転がるくらいの温度に再加熱するという焼戻し処理がなされるそうです。